2020年

令和2年度 第1回N-HECを開催しました(9月5日開催)

2020年9月5日 土曜日

今年度初めてのN-HECを開催しました。コロナウイルス感染のため、今年度は一度も学習会がきておりませんでしたが、感染予防に努め、開催に踏み切りました。

参加者は会場に来ていただいた方7名とリモート参加1名の合計8名で、久しぶりの対面に近況報告なども含めた会話を楽しみました。

本日は、Chin & Kramer「看護学の総合的な知の構築に向けて」のはじめに・第1章を抄読しました。

この理論は、Caperが1987年に発表した「看護学の基本的な知のパターン」の4つの知、つまり経験知、倫理知、個人知、審美知を発展させ、これらの知がどのようにつくられ。

他者に伝えられるのかを追求しています。現在、原著本は10版であり、未だ発展を続けています。

今回は、第6版の翻訳本を抄読しながらも、現時点での理論の発展を理解するために、第10版の序文も併せて抄読しました。

私たちが日常的に行っている看護のなかには、4つの知が含まれています。それは、単体ではなく統合されて実践として現れます。

4つの知について十分に理解できたとは言えませんが、参加者それぞれが自分の行っている看護を振り返りながら、これらの知が含まれていることを確認しました。

そして、その行為をなぜ行うのかといった意味や具体的な方法について、同僚や学生に説明することができていないことを実感しました。

それは、まだまだ日ごろの実践が知Knowingでとどまっており、他者と共有可能な知識Knowlegeになっていないことが多い、ということです。

Chin & Kramerは、なぜ看護学に知が必要なのかというと、看護をよりよいものにするため、そして看護師が専門職者としてアイデンティティを獲得し自信を持てるようになるためと説明しています。

これは、長年にわたり看護学が目指していることだといえます。実証主義の中で長らく認められなかった、経験知を除く3つの(正確には現在は4つの)知を追求することは、看護とは何かを明らかにする一つの取り組みであると考えました。

この理論は、ニーマン理論に通じるところが多々ありました。全体論に基づく理論と実践を融合したプラクシス、自分を知ることで他者を知ることの重要性など、核となる部分はかなり共通しています。しかし、知を4つに「区分する」という点が大きく異なると思いました。

ニューマン理論との共通点や違いを考えることは、理論の理解がさらに深まることに繋がります。

まだまだ理解には及びませんが、今後少しずつこの理論についても学習を重ねていきたいと考えています。

 

 

 

令和2年度 N-HEC開催予定(年間予定)

2020年3月3日 火曜日

令和2年度のN-HECの開催予定をお知らせいたします。

なお、この予定は今後変更(日程変更・休会)の可能性がありますことをご承知ください。

ニューマン理論やその他、看護実践に役立つ学習や事例の検討を行う予定です。

第1回:4月11日(土)*コロナウイルス感染の状況によって休会の可能性有

第2回:6月20日(土)

第3回:7月18日(土)

第4回:10月10日(土)

第5回:12月18日(土)

第6回:2月20日(土)

第7回:3月13日(土)

場所はいずれも天理医療大学A棟3階 演習室6です。

開催時間は13時半~17時です。

是非一緒に学び、より良い看護を考えましょう。日ごろの看護を語りたい方、お待ちしております。

経験年数や領域は問いません。どなた様もどうぞお越しください。

 

令和元年度 第6回N-HEC休会のお知らせ

2020年2月28日 金曜日

コロナウイルス感染のさらなる拡大が懸念される現状にあり、

3月22日に予定しておりました学習会は休会とします。

現在のところ、4月は学習会を開催する予定ですが、今後の予定につきましては追ってお知らせをいたします。

 

令和元年度 第5回N-HECを開催しました(2月8日開催)

2020年2月17日 月曜日

今回は、前回のアクションリサーチの基礎的な学習内容を踏まえて「ケアリングプラクシス 第13章」*1を抄読し、ニューマン理論に基づいたアクションリサーチの実際を学びました。この章は、日本の病院で看護研究者と臨床ナースが取り組んだミューチュアルアクションリサーチを紹介しています。ミューチュアル(mutual)とは「相互の」を意味しており、研究者と参加者の相互依存的な関係を大変重視します。そのため、よりニューマン理論に馴染む研究デザインです。

このアクションリサーチでは、8つの局面があり、局面1~4までがプロジェクトの準備段階、後半の局面5~8が実践の段階と言えます。まず、準備段階ではニューマン理論を実践に適用するために参加者(臨床ナース)が理論を理解できるよう支援すること、対話ができる豊かな環境づくり、そして参加者の“願い”を明確化していきます。この段階でのポイントのひとつは、“問題”ではなく“願い”を明確にするということです。このアクションリサーチ(プロジェクト、と言った方が適切かもしれません)は、問題が解決できれば達成されるのではなく、こうなって欲しいという願いをもって臨むことで、新たな成果を生むのだと解釈し、プロジェクトに携わる全ての人の意識が拡張していくプロセスの出発点は、実現したいと願っていることの明確化であることを学びました。問題を見出そうとすると、原因を追究したくなったり、批判する対象(人や状況)が生まれます。そうではなく同じ願いを持つことで、参加者の力がより発揮されるのだと思います。

そして、実践の段階では一人ひとりのナースが看護実践の過程で幾度も立ち止まり、自分と向き合って「自己のパターンを認識」することが何よりも重要で、それによってチーム全体の進化(意識の拡張)が導かれるだと分かりました。

この学習会では、何かに縛られず会話が出来る―表現は難しいのですが―自然体で話をしている自分に気づきます。今回は、この学習会に参加して「自分が変わったと思うこと」を参加者それぞれが話しました。看護の実践の場面で患者との関係性をより大切にしている、自分を意識するようになった、患者は私たちとは思考が違うことに気づいて関りが変わった、相手のパターンを知ろうとするなどの発言がありました。私たちの自分理解や自分の成長もこの学習会だからこそ、恥ずかしがらずに言葉にできます。興味を持たれた方は是非、この学習会に気軽に参加してみて下さい。

*1 遠藤恵美子ほか(2005/2013),第13章アクションリサーチチームの創出,キャロル・ピカード他(著)遠藤恵美子(監訳),ケアリングプラクシス,(pp.191-202).すぴか書房

令和元年度 第4回N-HECを開催しました(12月14日)

2020年1月15日 水曜日

 少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年も楽しく学びながら、日々の看護実践や教育の活力を得られるような学習会を、参加者みんなで作っていきたと思います。どうぞよろしくお願いします。

前回の事例検討で、参加者のAさんは、失語症患者Bさんの思いをナース達が理解できず、Bさんと距離を取ろうとしてしまうことに対して「あんなにサインを出しているのに、なぜ訴えがわからないのだろう」と悩んでいることを話してくれました。そして、Aさんが患者さんの全体をありまま捉えようとする看護実践が波及し、「I care you」が伝えられるよりよい病棟環境をつくるにはどうすれば良いのかと対話をしました。

そこで今回は、アクションリサーチが役に立つかもしれないと考え、書籍(筒井真由美(編)研究と実践をつなぐアクションリサーチ入門 看護研究の新たなステージへ,ライフサポート社,2010)を用いて、アクションリサーチについて学習しました。アクションリサーチは、客観性や妥当性・一般化をめざした実証主義の(いうなれば量的な)研究とは違い、特定の現場に起きている特定の出来事に焦点を当て、そこに潜む問題に向けた解決策を現場の人と共に探り、状況が変化することを目指すものです。実践と研究は分離できないというニューマン・プラクシスと非常に馴染む研究デザインであり、遠藤恵美子先生を中心に、ニューマン理論に基づく看護実践研究として複数報告されています。アクションリサーチは社会学者のLewinが創始者であり、全体論を唱えるゲシュタルト心理学や集団力学(グループダイナミックス)を基盤においています。つまり、「いま、ここ」に目を向けて、集団を構成するメンバー同士の相互作用に注目すること、そして、相互作用しあう仲間が共に行動を起こし、解決に向かうように導くことであるといえます。

アクションリサーチのプロセスでは、何度も立ち止まって状況を振り返るリフレクションが欠かせないということを学びました。また、研究者がどのように関与するのかが重要で、当事者とは違った視点でその状況を見ることができるのではないかと感じました。私たちの学習会でも、それぞれの違った立場での意見は大変貴重であり、違った発想に目から鱗が落ちることがあります。

 学習を終えて、本日の参加者からは「研究としては難しいけれど、毎日の看護実践には活用できそう」「初めて知ったけどニューマン理論に近いから理解しやすい」という声があがりました。そこで次回は、ニューマン理論におけるアクションリサーチの実際について研究論文を用いて、実践的に活用する方法を具体的に考えたいと思います。

 

今回は、新しい仲間がひとり増えました。それぞれ色々な立場の人たちとの学習は、新しい発見があります。どなたも大歓迎です、是非ご参加ください。